今日は夕方ぐらいから、なんだかとっても胸が苦しくなって、ドキドキしてきて、張り裂けそうでした。私が緊張してどうする・・・(笑)っていう感じですが、1年ぶりの三上博史主演舞台
「あわれ彼女は娼婦」の初日ですからねー。
開場には予定通り15分前に到着。パンフを買ったり、トイレに行ったりして準備。と、終了時間を見るとなんと10時過ぎ・・・。そんなに長いお芝居だったんだー、と心配になって、開演5分前にもう一度トイレに行く。今日の席は、1階中段より少し前の右側。ん、観やすい!特に初日だから全体が見渡せる席がいい。
一言でいうと、期待にたがわぬ内容で、満足、満足!
テーマが重たいだけに、どう展開するのか(もちろんジョン・フォードの脚本があるわけだけど)、蜷川さんが三上博史をどう料理するのか、いたぶるのか(笑)楽しみにしていました。
どんなだったか・・・伝えられるほどの表現力もなく、かなり一人よがりになりますが、感想は以下のとおり・・・。
まずは、三上博史をはじめとした役者のみなさん、好演でした。そして、役者の緊張感が客席にストレートに伝わってきて、前半は息苦しくなるほどの集中力。この集中力は最後まで途切れることなく、私は何度か胸がドキドキしてたまらなくなったり、涙があふれたり・・・といい芝居を経験させていただきました。
最後は、もう思いっきり感謝の気持ちを込めて、手をたたき続けた。スタンディングオベーション・・・しようと思ったんだけど、誰も立ち上がらないので、ちょっとビビッて、結局そのままライトがついてしまい、残念だったな。反省・・・
三上博史については、あとで書くとして、アナベラ役の深津絵里。美しく、汚れなく、純粋さが際立って、また安定した演技に魅力があふれていました。そして今回特に気になった役者・・・ソランゾ役の谷原章介。ちょっとイケメンで、すかした感じの役が多かったけど、今回は情念、怨念たっぷりの人間の秘められた負のエネルギーを表現していて、非常に良かったです。それにカッコイイ!美形で背が高くて、素敵☆
とはいえ、やっぱり私は個性あふれる三上博史の魅力に惹かれる~。
今回の役どころは、三上のハマリ役だと思う。思う存分暴れてくれたまえー!と蜷川さんが三上に用意してくれた役のように思えてなりません(爆)←これだけでもミカミマニアには伝わると思うんだけど・・・(笑)
知性がありながら、合理的に解決できない自分の心との苦悩にまみれ、純粋がゆえにつきあげる欲情、因習への反抗・・・、地球の真ん中からマグマがドロドロと噴き上げてくる、狂っているかのようなジョヴァンニを演じきっていました。
私は初めて蜷川作品を観たのですが、天井桟敷・寺山修司の演出に非常に重なって来る部分が多かったです。
闇と光の使い方、会場全体を使った演出、高低を活かした舞台装置。長いセリフと心の解説としてのセリフなど、本当にうまかった。
上演時間は3時間。途中15分の休憩が入って、終了は22:15頃でした。椅子のせいか、もうお尻が痛くてたまらなかった(笑)
今日見かけた有名人は、山田洋二監督、翻訳家の小田島雄志さん。お花は飾ってなかったな。
なぜ今、近親相姦なのか・・・。三上博史も最初に脚本を読んだときに疑問を持っていたようです。
近親相姦というと禁断の愛、神への反抗というイメージがありますが、この物語にはこの兄妹だけではなく、それぞれの登場人物が抱える「純粋」であるがゆえの「苦悩」と「運命」というものがベースに流れているように思う。
中世が舞台であることからも、キリスト教、男性社会、階級といった宗教によって保たれた秩序が物語全体をぐるっと壁のように囲んでいるんだけれども、ジョヴァンニとアナベラはその壁をつき抜けて、ただ自分達の心に素直に生きようとするのだが、無垢なるがゆえにしっぺ返しをくらってしまうのである。
帰りに渋谷の街をボーっと歩きながら思ったのは、どんな時代にも「権力」があり、その反作用として「アナーキー」な要素が社会に内在している。「権力」はなんでも力で抑えられると思っているけど、心では「アナーキー」なものの方がつき抜けていて、誰も実態を縛ることはできない。実は「アナーキスト」の勝ちだったりするけど、「権力者」は制圧していると思い込んでいる・・・。
400年前から今も、そんなことが累々と繰り広げられてきたんじゃないのかなぁ・・・ということ。
最後のシーンは、見ごたえがあります!
三上博史の額に浮き出た血管が・・・たまりません!